人材の採用や育成、そして従業員の待遇改善は、企業の成長にとって不可欠な投資です。しかし、これらの施策には相応のコストがかかるため、資金面での負担を感じる事業者も少なくありません。結論から申し上げますと、人材関連の施策を進める際には、厚生労働省管轄の「助成金」と経済産業省管轄の「補助金」の両方を視野に入れ、自社の目的に合った制度を活用することが重要です。それぞれの制度には特徴があり、要件を満たせば人材確保や定着に向けた取り組みの経費が対象になる場合があります。
人材関連は助成金と補助金を分けて考える
人材施策に活用できる支援制度を探す際、まずは「助成金」と「補助金」の違いを理解しておくことが大切です。一般的に、雇用や労働環境の改善を目的とする場合は厚生労働省が管轄する助成金が中心となります。一方、事業の生産性向上や新たな取り組みに伴う人材育成を目的とする場合は、経済産業省や中小企業庁が管轄する補助金が活用できる場合があります。
助成金は、労働関係法令を遵守し、所定の要件を満たして申請すれば受給できる可能性が高いという特徴があります。対して補助金は、事業計画の審査を経て採択される必要があり、競争率が存在します。そのため、自社の課題が「雇用環境の整備」なのか「事業成長のための人材投資」なのかによって、どちらの制度を優先して検討すべきかが変わってきます。
採用・研修・賃上げで確認したい制度
人材採用、従業員のスキルアップを目的とした研修、そしてモチベーション向上につながる賃上げなど、目的によって検討すべき制度は異なります。以下の表は、それぞれの目的に応じてどのような支援の方向性があるかを整理したものです。
| 目的 | 支援の方向性と特徴 | 主な管轄・制度の傾向 |
|---|---|---|
| 人材採用・定着 | 非正規雇用の正社員化や、多様な人材の確保・定着を図るための取り組みを支援します。 | 厚生労働省の助成金(キャリアアップ関連など) |
| 教育・研修 | 従業員の職務に関連する専門的な知識や技能を習得させるための訓練経費や賃金の一部を支援します。 | 厚生労働省の助成金(人材開発関連など) |
| 賃上げ・待遇改善 | 事業場内の最低賃金を引き上げ、生産性向上に向けた設備投資等を行う場合などに支援されます。 | 厚生労働省の助成金(業務改善関連など)、経産省の補助金 |
これらの制度は、企業の規模や現在の雇用状況によって対象となるかどうかが異なります。また、助成率や補助上限額も制度によって異なりますので、自社の状況に照らし合わせて確認することが求められます。最新条件は必ず公式サイトで確認してください1。
設備投資や業務改善と人材施策を組み合わせる方法
単に人を雇ったり給与を上げたりするだけでなく、設備投資やITツールの導入による業務改善と人材施策を組み合わせることで、より効果的に支援制度を活用できる場合があります。例えば、新しいシステムを導入して業務効率化を図り、その結果として生み出された利益を従業員の賃上げに還元するといった計画です。
このような取り組みは、経済産業省が推進する生産性向上を目的とした補助金の対象になる場合があります2。事業再構築やIT導入、ものづくりに関連する補助金の中には、一定の賃上げ目標を達成することで補助率が引き上げられたり、審査において加点措置が受けられたりする制度も存在します。設備投資の計画がある場合は、同時に人材への投資も計画に盛り込むことで、採択の可能性を高めることができるかもしれません。
対象者や雇用条件に注意する理由
人材関連の助成金や補助金を申請する際、特に注意しなければならないのが対象となる従業員の雇用条件です。制度によっては、「雇用保険の被保険者であること」「一定期間以上の継続雇用が見込まれること」「正社員であること」など、厳密な要件が定められています。
また、過去に労働関係法令の違反がないことや、会社都合による解雇を行っていないことなどが要件となる場合も多くあります。申請の準備を進める前に、自社の労務管理が適切に行われているか、就業規則が最新の法令に準拠しているかを確認しておくことが不可欠です。要件を満たしていない状態で申請しても不支給となるだけでなく、後から返還を求められるリスクもあるため、慎重な確認が必要です。
相談前に整理したい人員計画
専門家や関係機関に相談する前に、自社の人員計画を明確に整理しておくことで、スムーズに適切な制度を見つけることができます。具体的には、「いつまでに」「どのようなスキルを持った人材を」「何名採用(または育成)したいのか」、そして「それに伴う人件費や研修費用の予算はどの程度か」をリストアップしておきましょう。
また、現在の従業員の賃金水準や労働時間、社会保険の加入状況なども正確に把握しておく必要があります。これらの情報が整理されていれば、自社がどの制度の要件を満たしているかを判断しやすくなります。まずは人材に関する補助金・助成金や、賃上げに関連する支援制度の情報を幅広く収集し、自社の計画と照らし合わせてみてください。
まとめ:次に確認すること
人材の採用や育成、賃上げは企業にとって重要な課題ですが、適切な助成金や補助金を活用することで、その負担を軽減できる可能性があります。まずは自社の課題と人員計画を整理し、厚生労働省の助成金と経済産業省の補助金の両面から、活用できそうな制度がないかを探してみましょう。
制度の詳細は頻繁に変更されるため、公募要領や要件については中小企業庁のポータルサイトなどで最新の情報を確認することが重要です3。人材施策の内容に応じて、助成金・補助金の両面から確認しましょう。自社に合った制度の選定や申請に向けた準備についてご不明な点があれば、ぜひお問い合わせからお気軽にご相談ください。